第一級陸上特殊無線技士

一陸特 平成30年10月 無線工学(A)問1

2022-09-19

問題

次の記述は、対地静止衛星を利用する通信について述べたものである。このうち正しいものを下の番号から選べ。

  1. 赤道上空約36,000[km]の円軌道に打ち上げられた静止衛星は、地球の自転と同期して周回しているが、その周期は約12時間である。
  2. 電波が、地球上から通信衛星を経由して再び地球上に戻ってくるのに要する時間は、約0.1秒である。
  3. 衛星通信に10[GHz]以上の電波を使用する場合は、大気圏の降雨による減衰が少ないので、信号の劣化も少ない。
  4. 3個の通信衛星を赤道上空に等間隔に配置することにより、極地域を除く地球の大部分の地域を常時カバーする通信網が構成できる。
  5. 静止衛星から地表に到来する電波は極めて微弱であるため、静止衛星による衛星通信は、夏至と冬至のころに、地球局の受信アンテナの主ビームの見通し線上から到来する太陽雑音の影響を受ける。

解答

4

解説

静止衛星について

1.赤道上空約36,000[km]の円軌道に打ち上げられた静止衛星は、地球の自転と同期して周回しているが、その周期は12時間である。
→誤り。地球の自転と同期するので、周期は24時間です。

2.電波が、地球上から通信衛星を経由して再び地球上に戻ってくるのに要する時間は、約0.1秒である。
→誤り。地球が衛星を経由して戻ってくるには、約0.24秒かかります。(下記の「電波が通信衛星を経由して地球に戻る時間」を参照)

3.衛星通信に10[GHz]以上の電波を使用する場合は、大気圏の降雨による減衰が少ないので、信号の劣化も少ない。
→誤り。大気中の雨や霧、雲などによって、電波が吸収や反射、散乱をしてしまい、減衰してしまう現象を降雨減衰といいます。降雨減衰は、十数GHzといった、周波数の高い領域で影響を受けます。

4.3個の通信衛星を赤道上空に等間隔に配置することにより、極地域を除く地球の大部分の地域を常時カバーする通信網が構成できる。
→正しい。理論上は3つの通信衛星を赤道上空に等間隔に配置することにより、極地域を除く地球上のほとんどの地域をカバーする通信網が構成できます。

出典:RFワールド

5.静止衛星から地表に到来する電波は極めて微弱であるため、静止衛星による衛星通信は、夏至と冬至のころに、地球局の受信アンテナの主ビームの見通し線上から到来する太陽雑音の影響を受ける。
→誤り。太陽から放射される雑音を太陽雑音といいます。衛星の延長線上を太陽が横切るときに、この太陽雑音が影響します。幾何学的関係から、春分と秋分の前後の期間に太陽雑音が発生することが知られています。

電波が通信衛星を経由して地球に戻る時間

時間=距離/速さの関係式を用いて計算します。

衛星が地球局から約37,500 [km]の高さで回っているとすると、地球局~衛星間距離は往復で75,000 [km]です。

また、電波の速さは、光速と等しく3.0×108 [m/s]です。

これより、発信者→受信者までの往路にかかる時間t[s]は、

$$\begin{eqnarray} t=\frac{75,000\times10^3}{3.0\times10^8}=25/100=0.25[\rm s] \end{eqnarray}$$

と求めることができます。

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