問題
次の記述は、デジタル変調のうち直交振幅変調(QAM)方式について述べたものである。このうち誤っているものを下の番号から選べ。
ただし、信号空間ダイアグラム上の信号点が変動し、受信側において隣接する信号点と誤って判断する現象をシンボル誤りという。
また、信号空間ダイアグラムにおける信号点の間の距離のうち、最も短いものを信号点間距離とする。
- QAM方式は、搬送波の振幅と位相の二つのパラメータを用いて、伝送する方式である。
- 64QAM方式は、64個の信号点を持つ QAM 方式である。
- 64QAM方式は、16QAM 方式と比較すると、一般に両方式の平均電力が同じ場合、信号点間距離が短くなるので、原理的に伝送路等におけるノイズやひずみによるシンボル誤りが起こりやすくなる。
- 64QAM方式は、QPSK(4PSK)方式と比較すると、同程度の占有周波数帯幅で同一時間内に16倍の情報量を伝送できる。
解答
4
解説
QPSKで表現できるビット数は2ビット(00~11までの4通り)、64QAMで表現できるビット数は6ビット(000000~111111までの64通り)。
従って、64QAMはQPSKに比べて3倍の情報量を伝送できる、が正しい記述です。
QAM(Quadrature Amplitude Modulation;直交振幅変調)
QAM(カム)とは、ディジタル変調の方式の1つで、振幅と位相の両方を組み合わせてデータを割り当てる変調方式です。
ディジタル変調方式の代表的なBPSK、QPSKと振幅、位相の関係を見てみましょう。
BPSKやQPSKは位相偏移変調(phase-shift keying, PSK)とその名の通り、信号の位置によって0/1の割り当てが決まり、振幅の大きさは気にしません。
例えば、上記のBPSKでは、信号の位相が90°~270°の範囲を1、0~90°と270°~360°の範囲を1としています。
つまり、振幅の大きさに寄らず、0か1かは信号の位相によって決まります。
QPSKも同様で、BPSKは180°の範囲だったものをQPSKでは90°刻みに信号を割り当てることで、QPSKより多くのディジタルデータを伝送できます。
一方、16QAMを見てみましょう。16QAMはQPSKと比較して、1つの90°刻みのエリアをさらに4つに分割しています。
つまり、もはや位相だけではどのデータなのかが分かりません。
16QAMでは、位相に加えて、振幅の大きさ(矢印の大きさ)も信号を割り当てる要素となっています。これがQAMの特徴です。
16QAMでは4ビットのデータを表現できます。同じ考え方で刻むエリアを拡張していくと、64QAMは6ビット、256QAMでは8ビットのデータを表現できます。
しかしながら、BPSKと比べて、QPSKや16QAM、64QAM、256QAMと拡張するほど、干渉やノイズに弱くなります。
なぜなら、信号の割り当てられた範囲がどんどん狭くなっていくため、雑音や干渉の影響で、少し信号が変化しただけでも、他のエリアの信号だと誤って判断してしまうからです。
特に、LTEなどの携帯電話の世界では、電車や車中での利用など、移動によって通信環境が常に変化するため、通信品質のよい環境において上位の変調方式を使うという、適応変調符号化方式が用いられています。