第一級陸上特殊無線技士

一陸特 令和7年10月 無線工学(A)問1

2025-11-17

問題

次の記述は、対地静止衛星を利用する通信について述べたものである。このうち誤っているものを下の番号から選べ。

  1. 3機の通信衛星を赤道上空に等間隔に配置することにより、極地域を除く地球上のほとんどの地域をカバーする通信網が構成できる。
  2. 衛星の電源には太陽電池を使用するため、太陽電池が発電しない衛星食の時期に備えて、蓄電池等を搭載する必要がある。
  3. 衛星通信では、一般に送信地球局から衛星へのアップリンク用の周波数と衛星から受信地球局へのダウンリンク用の周波数が対で用いられる。
  4. 衛星通信に10[GHz]以上の電波を使用する場合は、大気圏の降雨による減衰が少ないので、信号の劣化も少ない。
  5. 衛星と送信地球局間及び衛星と受信地球局間の距離が共に37,500[km]の場合、送信から受信まで0.25秒程度の電波の伝搬による遅延がある。

解答

4

解説

1.3機の通信衛星を赤道上空に等間隔に配置することにより、極地域を除く地球上のほとんどの地域をカバーする通信網が構成できる。
→正しい。理論上は3つの衛星で地球をカバーできます。

出典:RFワールド

2.衛星の電源には太陽電池を使用するため、太陽電池が発電しない衛星食の時期に備えて、蓄電池等を搭載する必要がある。
→正しい。太陽電池は、ソーラーパネルで発電した電気を蓄電池で保存して利用するため、蓄電池は必須です。

3.衛星通信では、一般に送信地球局から衛星へのアップリンク用の周波数と衛星から受信地球局へのダウンリンク用の周波数が対で用いられる。
→正しい。衛星通信ではアップリンクとダウンリンクの周波数を別に確保し、それを1つのペアとして用います。

例えば、VSATシステムでは、下記の様に周波数の割り当てがされています。

出典:総務省

4.衛星通信に10[GHz]以上の電波を使用する場合は、大気圏の降雨による減衰が少ないので、信号の劣化も少ない。
→誤り。大気中の雨や霧、雲などによって、電波が吸収や反射、散乱をしてしまい、減衰してしまう現象を降雨減衰といいます。降雨減衰は、十数GHzといった、周波数の高い領域で影響を受けます。

5.衛星と送信地球局間及び衛星と受信地球局間の距離が共に37,500[km]の場合、送信から受信まで0.25秒程度の電波の伝搬による遅延がある。
→正しい。以下の通り、送信から受信まで0.25秒かかります。

電波の伝搬速度について

電波の伝搬速度は、光の速度と同じです。そのため、電波の伝搬速度をc[m/s]とすると、

$$c=3.0\times10^8[{\rm m/s}]$$

と表すことができます。

これと時間=距離/速さの関係より、中継に掛かる時間が求められますが、下図の通り、1中継には電波が静止衛星と地球局の間を2回通るため、距離は37,500[km]の2倍かかります。

したがって、時間t[s]は

$$t=\frac{2\times37500\times10^3}{3.0\times10^8}=25000\times10^{-5}=0.25[\rm s]$$

と求められます。

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