問題
次の記述は、地上系マイクロ波多重回線の中継方式について述べたものである。このうち誤っているものを下の番号から選べ。
- 再生中継方式は、復調した信号から元の符号パルスを再生した後、再度変調して送信するため、波形ひずみ等が累積されない。
- 非再生(ヘテロダイン)中継方式は、送られてきた電波を受信してその周波数を中間周波数に変換して増幅した後、再度周波数変換を行い、これを所定レベルまで電力増幅して送信する方式であり、復調及び変調は行わない。
- 直接中継方式は、受信波を同一の周波数帯で増幅して送信する方式である。
- 2周波中継方式において、ラジオダクトによるオーバーリーチ干渉を避ける方法としては、中継ルートを直線的に設定して、アンテナのサイドローブを利用することが多い。
解答
4
解説
マイクロ波の中継方式
通信到達距離を伸ばしたり、通信エリアを拡大したりする目的で、送信元から宛先の途中に中継局を設け、減衰した信号を増幅する方式を中継方式と言います。
マイクロ波のうち、特に3GHzから30GHzの周波数をSHF(Super High Frequency)と言いますが、マイクロ波の中継方式として下記の4つがあります。
- 無給電中継方式
- 直接中継方式
- 非再生中継方式(ヘテロダイン中継方式)
- 再生中継方式
無給電中継方式
増幅装置を用いず、電波を中継する方式を無給電中継方式(Passive Repeater)と言います。
特に、山間部などで見通し内通信ができない場合に、反射板を用いて電波を反射させ伝搬させるという使い方が用いられます。
その名の通り、増幅装置が無いため電力供給の必要が無く、構成がシンプルであるため、メンテナンスが簡単というメリットがあります。
直接中継方式
直接中継方式は、受信した信号を復調せず、マイクロ波のまま増幅して転送する方式です。
構成が簡単な分、コストがかからず、また中継による遅延も小さくできます。
しかしながら、雑音や干渉もそのまま増幅してしまうため、信号が劣化するという欠点があります。
非再生中継方式(ヘテロダイン中継方式)
非再生中継方式は、受信した信号を一旦中間周波数に変換し、中間周波増幅器によって増幅し、その後マイクロ波に変換して送信する方式です。ヘテロダイン中継方式ともいいます。
直接中継方式と同じように、信号の復調・変調は行われませんが、中間周波増幅器を用いることで、高周波増幅器が不要となるため、雑音や波形ひずみが直接中継方式よりも少なくなります。
再生中継方式
再生中継方式は、受信した信号を一旦復調し、再度変調した後に送信する方式です。
一度復調を行うことで、雑音や干渉による誤りを訂正したうえで送信するため、非再生中継方式に比べて誤りが少なく正確なデータ伝送ができます。
しかしながら、回路構成が複雑になり、また信号処理を行う分、遅延が発生するという欠点があります。
サイドローブ
アンテナの指向性を下図に示します。
利得が一番大きくなる部分をメインローブといい、メインローブを通信相手に向けるようにアンテナを設置します。
一方、アンテナからはメインローブ以外にも、電波を放射してしまいます。
メインローブ以外の電波をサイドローブといい、特にメインローブの反対側に放射する電波をバックローブといいます。
想定外の方向に電波を放射するため、サイドローブやバックローブは他の無線局への干渉になってしまいます。
そのため、サイドローブやバックローブの放射特性の低いアンテナを選ぶように設計します。
ラジオダクト
気象条件や天候により、大気の屈折率が変化します。すると、大気中に、電波がうまく反射して遠くへ届いてしまう層ができてしまうことがあります。
これをラジオダクトと呼んでいます。
オーバーリーチ干渉
ラジオダクトなどによる想定外の伝搬によって、本来意図していないエリアに電波が届き、干渉を引き起こしてしまいます。
これをオーバーリーチ干渉と呼びます。
オーバーリーチ干渉を避けるには、無線局のメインビーム方向に、他の無線局が直線的に揃わないようにカバーエリアを設計します。