第一級陸上特殊無線技士

一陸特 令和4年2月 無線工学(A)問2

2022-03-20

問題

次の記述は、直接拡散(DS)を用いた符号分割多重(CDM)伝送方式の一般的な特徴について述べたものである。このうち誤っているものを下の番号から選べ。

  1. 送信側で用いた擬似雑音符号と同じ符号でしか復調できないため秘話性が高い。
  2. 拡散変調では、送信する音声やデータなどの情報をそれらが本来有する周波数帯域よりもはるかに広い帯域に広げる。
  3. 拡散符号により、情報を広帯域に一様に拡散し電力スペクトル密度の低い雑音状にすることで、通信していることの秘匿性高い。
  4. 受信時に混入した狭帯域の妨害波は受信側で拡散されるので、狭帯域の妨害波に弱い。

解答

4

受信時に混入した狭帯域の妨害波は受信側で拡散されるので、狭帯域の妨害波に強い

解説

スペクトル拡散方式

多重化(Multiplexing)の方式の1つに、CDM(Code Division Multiplexing)という方式があります。

CDMにはスペクトル拡散方式(Spread Spectrum)という通信技術が用いられています。

スペクトル拡散方式は、BPSKやQPSKなどの変調後の信号(シンボルと言います)に対し、拡散信号と呼ばれる高速の信号を掛け合せることが特徴です。

例えば、元々のBPSKシンボル1ビットに対して、拡散符号8ビットを掛け合せた例を下記に示します。

シンボル間隔の1周期の中に拡散符号の1セットが入るようして、拡散符号を掛け合せます。

この送信シンボルに拡散符号を掛け合せることを拡散といいます。

今回の例では、シンボルに比べて拡散符号は8倍高速な信号です。周波数fと周期Tには、f=1/Tの関係があります。

元のシンボルに対して、拡散後の信号の周期が高速になるほど、つまりTが小さくなるほど、周波数fは大きくなっていきます。

すなわち、拡散符号を掛け合せる行為は、元の信号より周波数が大きくなる、つまり周波数帯域が広がることを意味します。

これがスペクトル拡散方式と呼ばれる理由なのです。

また、拡散しても電波の総送信電力は同じですので、電力スペクトル密度は低くなります。

スペクトル拡散方式の利点

スペクトル拡散方式の強みは、①秘匿性と、②干渉(妨害波)に強いことです。

①秘匿性について

なぜなら、受信側で送信信号と拡散符号を知らない限り、信号を復元できないからです。

逆拡散の図で、もし逆拡散をする時に、送信時とは異なる拡散符号を使ったとしても、シンボルは正しく復元できません。

下記の例を見てみましょう。

これは、受信側で拡散符号を知っており、正しく復元できた例です。

一方、拡散符号を知らないと、どうなるのでしょうか。

下記のように、偽の拡散符号を掛け合せても、BPSKシンボルを正しく復元できていません。

つまり、受信側で拡散符号を知らない限り、信号を復元することができません。

この理由から、スペクトル拡散方式は秘匿性が高いと言われています。

②干渉耐性について

なぜなら、逆拡散は、妨害波にとっては"拡散"をすることになり、妨害波の影響を希望信号に比べて低くできるからです。

例えば、下記の様なネットワークを考えてみます。

このときのスペクトル拡散の動作イメージを周波数軸で示します。

①が拡散前の信号です。

②が逆拡散後の信号です。スペクトル拡散のその名の通り、拡散後は周波数軸で広がります。

③が受信時の信号です。希望信号に加えて、干渉信号が加わっています。

④が逆拡散後の信号です。希望信号は逆拡散によって復元されますが、干渉信号にとっては拡散信号を掛け合せるために"拡散"されることとなり、干渉信号の影響が小さくなります。

これが、スペクトル拡散が干渉に強いと言われる理由なのです。

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