第一級陸上特殊無線技士

一陸特 令和6年10月 無線工学(A)問11

2024-11-11

問題

受信機で発生する相互変調による混信についての記述として、正しいものを下の番号から選べ。

  1. 希望波信号を受信しているときに、妨害波のために受信機の感度が抑圧される現象。
  2. 一つの希望波信号を受信しているときに、二以上の強力な妨害波が到来し、それが、受信機の非直線性により、受信機内部に希望波信号周波数又は受信機の中間周波数と等しい周波数を発生させ、希望波信号の受信を妨害する現象。
  3. 増幅回路及び音響系を含む回路が、不要な帰還のため発振して、可聴音を発生すること。
  4. 増幅回路の配線等に存在するインダクタンスや静電容量により増幅回路が発振回路を形成し、妨害波を発振すること。

解答

2

解説

直線性と相互変調

増幅器では、入力信号xに対して、出力信号yは増幅率aの分だけ、信号を増幅して出力します。

これより、出力yは入力xのa倍となるため、比例関係(y=ax)がある、ということができます。

つまり、直線性とは、比例のグラフy=axのように、増幅器の出力が入力に比例する性質ことを言います。

一方で、増幅器はトランジスタをはじめとした、非線形素子による増幅を行う回路です。

つまり、増幅器の動作は完全に直線とはならない部分もあるのです。

例として、下図にトランジスタのコレクタ電流ICのとベース電圧VBE特性を表していますが、ご覧の通り直線的な動作ではありません。

ある程度は直線的とみなせれば問題ないのですが、直線的とみなせなくなる(つまり非直線的である)と問題が起こります。

では、非直線性があると、なにが問題なのでしょうか?

それが相互変調積なのです。

簡単な例として、増幅器に希望信号と干渉信号の2つの信号が入力され、増幅器にて二次関数(y=ax2+bx+c)で増幅される(=非直線的な特性)と考えます。

三角関数の半角公式と積和公式を駆使して展開すると、下記の通りになります。

$$\begin{eqnarray} y & = & ax^2+bx+c \\ & = & a(V_1\cos\omega_1t+V_2\cos\omega_2t)^2 \\ &+&b(V_1\cos\omega_1t+V_2\cos\omega_2t)+c \\ & = & aV_1^2\cos^2\omega_1t+2aV_1V_2\cos\omega_1t\cos\omega_2t+aV_2^2\cos^2\omega_2t \\ &+&b(V_1\cos\omega_1t+V_2\cos\omega_2t)+c \\ & = & aV_1^2\times\frac{1+\cos2\omega_1t}{2}+aV_1V_2\cos(\omega_1+\omega_2)t+aV_1V_2\cos(\omega_1-\omega_2)t+aV_2^2\times\frac{1+\cos2\omega_2t}{2} \\ &+&b(V_1\cos\omega_1t+V_2\cos\omega_2t)+c \\ \end{eqnarray}$$

つまるところ、6つの周波数成分が出てくるのです。

特に、この中で、nω1±mω2の成分を相互変調積といい、希望信号成分に近いことから除去が困難であるため、問題になるのです。

※数式の簡単化のため2次関数で説明しましたが、厳密には3次関数で生じる相互変調積が希望信号成分に極めて近くなり、除去が困難です。

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