問題
次の記述は、図に示す方向性結合器を用いて導波管回路の定在波比(SWR)を測定する方法について述べたものである。( )内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。なお、同じ記号の( )内には、同じ字句が入るものとする。
- (1):主導波管の①からマイクロ波電力を加え、②に被測定回路、③に電力計Ⅰ、④に電力計Ⅱを接続したとき、副導波管の出力③には反射波に( A )した電力が、副導波管の出力④には進行波に( A )した電力が得られる。
- (2):電力計Ⅰ及び電力計Ⅱの指示値がそれぞれM1 [W]及びM2 [W]であるとき、反射係数Γは( B )で表される。また、SWRは、(1+Γ)/(1-Γ)により求められる。
A | B | |
---|---|---|
1 | 反比例 | √(M1/M2) |
2 | 反比例 | √(M2/M1) |
3 | 比例 | √(M2/M1) |
4 | 比例 | √(M1/M2) |
5 | 比例 | √(M1-M2/M1) |
解答
4
解説
方向性結合器
方向性結合器はカップラー(Directional coupler)とも呼ばれ、信号を測定するために、無線機とアンテナの間に挿入し、信号を取り出すためのものです。
無線機の送信出力を測定する場合の構成例を下記に示します。
方向性結合器を挟まず、無線機を直接、測定器につないでもよいのですが、測定器に接続している間、運用が停止してしまいます。
これを防ぐため、方向性結合器を使うことでサービスを止めずに、電波の測定も同時に行うことができます。
方向性結合器には、単方向性結合器と双方向性結合器があります。
単方向性結合器は3ポートで、入射波を分けます。
双方向性結合器は4ポートで、入射波を出力するポートと、反射波を出力するポートがあります。
導波管の方向性結合器
問題で与えられたような導波管の方向性結合器において、入力と出力の関係は下図のようになります。
反射係数
異なる特性インピーダンスの伝送路同士を接続すると、反射波といって、信号の一部が戻ってきてしまい、電力損失が発生します。
入射波と反射波の電圧の割合を反射係数といい、下記式で表されます。
$$\begin{eqnarray} \Gamma=\frac{V_r}{V_i} \end{eqnarray}$$Viは入射波の電圧、Vrは反射波の電圧を表します。
また、反射の度合いを表す数字として、VSWR(電圧定在波比、Voltage Standing Wave Ratio)もあります。
※問題文の場合は、M1、M2が電力表記になっています。電圧表記にするには、平方根をとって、√M1や√M2と表記します。
電圧定在波比は、定在波(入射波と反射波を足したもの。)の電圧最大値と最小値の比で表され、反射係数を使って下記の様に変換できることが知られています。
$$\begin{eqnarray} VSWR=\frac{V_{\rm max}}{V_{\rm min}}=\frac{1+|\Gamma|}{1-|\Gamma|} \end{eqnarray}$$VSWR=1の時が反射がない状態を表し、反射が多くなるほどVSWRが大きくなっていきます。