第一級陸上特殊無線技士

一陸特 令和4年6月 無線工学(B)問24

2022-08-05

問題

次の記述は、図に示すボロメータ形電力計を用いたマイクロ波電力の測定方法の原理について述べたものである。( )内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。

  • (1):直流ブリッジ回路の一辺を構成しているサーミスタ抵抗RSの値は、サーミスタに加わったマイクロ波電力及びブリッジの直流電流に応じて変化する。
  • (2):マイクロ波入力のない状態において、可変抵抗Rを加減してブリッジの平衡をとり、サーミスタに流れる電流I1[A]を電流計Aで読み取る。このときのサーミスタで消費される電力は( A )[W]で表される。
  • (3):次に、サーミスタにマイクロ波電力を加えると、サーミスタの発熱によりRSが変化し、ブリッジの平衡が崩れるので、再びRを調整してブリッジの平衡をとる。このときのサーミスタに流れる電流I2[A]を電流計Aで読み取れば、サーミスタに吸収されたマイクロ波電力は( B )[W]で求められる。
AB
1I12R2R3/R1(I1+I2)R2R3/R1
2I12R1R2/R3(I12+I22)R1R2/R3
3I12R1R2/R3(I12-I22)R1R2/R3
4I12R1R3/R2 (I1-I2)R1R3/R2
5I12R1R3/R2(I12-I22)R1R3/R2

解答

5

解説

ボロメータによる高周波電力測定

高周波の電力測定を測定する方法の1つとして、ボロメータブリッジがあります。

温度によって変化する素子(サーミスタ)にマイクロ波を照射させ、サーミスタの温度変化から高周波電力を測定する方法です。

ボロメータブリッジの回路図を下記に示します。

ボロメータブリッジでは、マイクロ波入力がないときのサーミスタでの消費電力と、マイクロ波入力があるときの消費電力と、2回電力測定を行います。

この2つの電力の差分をとると、高周波電力が求められます。なぜなら、消費電力の増加分が、マイクロ波による電力による増加分だからです。

イメージを下記に示します。

続いて、詳細を説明します。

まず、マイクロ波がないときに、Rを調整して、平衡状態にします。

平衡状態では、RSR2=R1R3が成り立ちます。

したがって、サーミスタRSに流れる電流をI1とすると、1回目の測定の消費電力P1は、下記の様に表されます。

$$P_1=R_SI_1^2=\frac{R_1R_3}{R_2}I_1^2$$

続いて、マイクロ波をサーミスタRSに照射します。すると、平衡状態が崩れるので、Rを調整して、また平衡状態にします。

同様に、サーミスタRSに流れる電流をI2とすると、2回目の測定の消費電力P2は、下記の様に表されます。

$$P_2=R_SI_2^2=\frac{R_1R_3}{R_2}I_2^2$$

これより、高周波電力は、下記の様に求めることができます。

$$\begin{eqnarray} P_1-P_2&=&R_SI_1^2-R_SI_2^2 \\ &=&\frac{R_1R_3}{R_2}I_1^2-\frac{R_1R_3}{R_2}I_2^2 \\ &=&(I_1^2-I_2^2)\times \frac{R_1R_3}{R_2} \end{eqnarray}$$

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