第一級陸上特殊無線技士

一陸特 令和4年6月 無線工学(A)問11

2022-06-29

問題

次の記述は、デジタル無線通信に用いられる一つの回路(装置)について述べたものである。該当する回路の一般的な名称として適切なものを下の番号から選べ。

周波数選択性フェージングなどによる伝送特性の劣化は、波形ひずみとなって現れてビット誤り率が大きくなる原因となるため、伝送中に生じる受信信号の振幅や位相のひずみをその変化に応じて補償する回路が用いられる。この回路は、周波数領域で補償する回路と時間領域で補償する回路に大別される。

  1. 符号器
  2. 等化器
  3. 導波器
  4. 分波器
  5. 圧縮器

解答

2

解説

等化器(equalizer)

送信機から受信機へと信号を伝送するとき、信号は障害物によって反射を何度も繰り返した後、受信機へと到達します。

このような環境を、信号の通る道(パス)が複数あることから、マルチパス環境と呼ばれます。

マルチパス環境で受信機に届く信号は、様々なパスを通ってきた信号すべての合成となり、マルチパスフェージングと呼ばれる減衰や波形の歪みを生じてしまいます。

マルチパスフェージングは、周波数一様フェージングと周波数選択性フェージングの2つに分類されます。

周波数一様フェージングは、到来時間の差が小さい波の合成の結果、信号が減衰して振幅と位相が変化してしまう現象です。

一方、周波数選択性フェージングは、到来時間の差が大きい波の合成によって生じ、波形が歪んでしまう現象です。

到来時間が遅い波を遅延波といいますが、高速通信環境下ではこの遅延波により、周波数選択性フェージングを引き起こします。

なぜなら、高速になればなるほど、少しの遅延でも、元々の波形を歪ませてしまうからです。

時間軸で示しましたが、これを周波数軸で表現すると、下記の様になります。

周波数一様フェージングの場合は、波形の歪みが無いため、波形の減衰に対して増幅器で増幅してやれば元の信号を取り出せます。

一方、周波数選択性フェージングは、単に増幅しただけでは波形の歪みもそのまま増幅されるため、元の信号を取り出すことができません。

では、周波数選択性フェージングによって生じた波形の歪みを改善(通信の世界では補償といいます)するものが等化器(equalizer;イコライザー)です。

増幅器が、信号全体を増幅するのに対し、等化器は特定の周波数に対する劣化を改善(補償)する役割で用いられます。

-第一級陸上特殊無線技士
-,

© 2024 はちさんの通信系資格ブログ