第一級陸上特殊無線技士

一陸特 令和2年2月 無線工学(A)問1

2020-08-23

問題

次の記述は、静止衛星による通信について述べたものである。( )内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。なお、同じ記号の( )内には、同じ字句が入るものとする。

  • (1):衛星に搭載する中継装置の回線を分割し、多数の( A )が共用するため、FDMA、TDMAなどの多元接続方式が用いられる。
  • (2):FDMA方式は、( B )を分割して各( A )に回線を割り当てる。
  • (3):静止衛星と地球局間の距離が37,500kmの場合、一中継当たり( C )秒程度の電波の伝搬による遅延がある。
ABC
1地球局周波数0.1
2地球局時間0.1
3地球局周波数0.25
4宇宙局周波数0.25
5宇宙局時間0.1

解答

3

解説

多元接続について

宇宙局(衛星)と比べて地球局の数の方が多いため、複数の地球局同士で、通信路を共有する必要があります。

なぜなら、複数の地球局が一斉に宇宙局に通信すると、お互いの電波が干渉し、通信が失敗するからです。

つまり、何らかのリソース(周波数、時間、符号、空間など)を共有し、割り当てられた周波数帯域を地球局同士で共有する仕組みが必要となります。

これを多元接続(multiple access)と言います。

代表的には下記の4通りがあります。

  • FDMA(Frequency Division Multiple Access、周波数分割多元接続)
    周波数帯を分割して割り当てることで、干渉しないように通信する方式
  • TDMA(Time Division Multiple Access、時分割多元接続)
    通信できる時間を細切れに分割し、通信できる時間を割り当てる方式
  • CDMA(Code Division Multiple Access、符号分割多元接続)
    拡散符号と呼ばれる特別な符号を地球局へ割り当て、地球局を識別できるようにする方式
  • SDMA(Space ivision Multiple Access、空間分割多元接続)
    アンテナの指向性を利用し、干渉を防ぐことで同時に通信をできるようにする方式

電波の伝搬速度について

電波の伝搬速度は、光の速度と同じです。そのため、電波の伝搬速度をc[m/s]とすると、

$$c=3.0\times10^8[{\rm m/s}]$$

と表すことができます。

これと時間=距離/速さの関係より、中継に掛かる時間が求められますが、下図の通り、1中継には電波が静止衛星と地球局の間を2回通るため、距離は37,500[km]の2倍かかります。

したがって、時間t[s]は

$$t=\frac{2\times37500\times10^3}{3.0\times10^8}=25000\times10^{-5}=0.25[\rm s]$$

と求められます。

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