問題
次の記述は、スーパヘテロダイン受信機において生じることがある混信妨害について述べたものである。このうち誤っているものを下の番号から選べ。
- 近接周波数による混信妨害は、妨害波の周波数が受信周波数に近接しているときに生じる。
- 影像周波数による混信妨害は、高周波増幅器の選択度を向上させることにより軽減できる。
- 相互変調による混信妨害は、高周波増幅器などが入出力特性の直線範囲で動作するときに生じる。
- 相互変調による混信妨害は、周波数混合器以前の同調回路の周波数選択度を向上させることにより軽減できる。
解答
3
相互変調積による干渉は、入出力特性の非直線範囲で動作するときに生じます。
解説
スーパーヘテロダイン方式
一般的に、電波を受信した際には、雑音や干渉などにより、電波が弱くなっているため、元の信号を復調するために、受信した信号を増幅します。
しかし、周波数が高くなるほど、その扱いが難しくなっていきます。
実は、ケーブルや回路内には、とても小さな抵抗、インダクタンス成分、キャパシタンス成分がついています。
低周波ではこれらの成分が無視できましたが、高周波になるほど無視できなくなります。
そのため、信号の増幅を行うには、高い周波数で行うのではなく、一旦別の周波数(中間周波数といいます)へ変換してから増幅を行います。
このように周波数変換をおこなってから増幅する方式をスーパーヘテロダイン受信方式と呼ばれます。
この方式はラジオ、テレビへ幅広く使われています。
欠点
スーパーヘテロダイン方式の欠点は、相互変調、混変調、イメージ(影像)妨害といった、干渉が発生する点です。
直線性と相互変調
増幅器では、入力信号xに対して、出力信号yは増幅率aの分だけ、信号を増幅して出力します。
これより、出力yは入力xのa倍となるため、比例関係(y=ax)がある、ということができます。
つまり、直線性とは、比例のグラフy=axのように、増幅器の出力が入力に比例する性質ことを言います。
一方で、増幅器はトランジスタをはじめとした、非線形素子による増幅を行う回路です。
つまり、増幅器の動作は完全に直線とはならない部分もあるのです。
例として、下図にトランジスタのコレクタ電流ICのとベース電圧VBE特性を表していますが、ご覧の通り直線的な動作ではありません。
ある程度は直線的とみなせれば問題ないのですが、直線的とみなせなくなる(つまり非直線的である)と問題が起こります。
では、非直線性があると、なにが問題なのでしょうか?
それが相互変調積なのです。
簡単な例として、増幅器に希望信号と干渉信号の2つの信号が入力され、増幅器にて二次関数(y=ax2+bx+c)で増幅される(=非直線的な特性)と考えます。
三角関数の半角公式と積和公式を駆使して展開すると、下記の通りになります。
$$\begin{eqnarray} y & = & ax^2+bx+c \\ & = & a(V_1\cos\omega_1t+V_2\cos\omega_2t)^2 \\ &+&b(V_1\cos\omega_1t+V_2\cos\omega_2t)+c \\ & = & aV_1^2\cos^2\omega_1t+2aV_1V_2\cos\omega_1t\cos\omega_2t+aV_2^2\cos^2\omega_2t \\ &+&b(V_1\cos\omega_1t+V_2\cos\omega_2t)+c \\ & = & aV_1^2\times\frac{1+\cos2\omega_1t}{2}+aV_1V_2\cos(\omega_1+\omega_2)t+aV_1V_2\cos(\omega_1-\omega_2)t+aV_2^2\times\frac{1+\cos2\omega_2t}{2} \\ &+&b(V_1\cos\omega_1t+V_2\cos\omega_2t)+c \\ \end{eqnarray}$$つまるところ、6つの周波数成分が出てくるのです。
特に、この中で、nω1±mω2の成分を相互変調積といい、希望信号成分に近いことから除去が困難であるため、問題になるのです。
※数式の簡単化のため2次関数で説明しましたが、厳密には3次関数で生じる相互変調積が希望信号成分に極めて近くなり、除去が困難です。
イメージ妨害(影像妨害)
スーパーヘテロダイン方式で、他に問題となるのが、イメージ妨害(影像妨害や影像周波数ともいう)です。
結論、イメージ妨害は中間周波数に変換する際に、希望信号成分のみならず、干渉信号成分も中間周波数と同じ周波数に変換されてしまうために発生する現象です。
なぜそのような現象が起こるのでしょうか?
下記の構成図を例に見てみます。
混合器では、局部発信器と受信信号の差の周波数を出力します。
そして、中間周波数増幅器にて、1つの成分をフィルタ・増幅して、出力します。
干渉信号に対しても同様の動きをするのですが、問題になるのが、干渉信号成分の変換後の周波数が希望信号成分と同じになってしまうことです。
これが影像妨害の原理です。