第一級陸上特殊無線技士

一陸特 令和3年10月 無線工学(A)問12

2021-11-06

問題

次の記述は、符号分割多元接続方式(CDMA)を利用した携帯無線通信システムについて述べたものである。( )内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。

  • (1):ソフトハンドオーバは、すべての基地局のセル、セクタで( A )周波数を使用することを利用して、移動局が複数の基地局と並行して通信を行うことで、セル( B )での短区間変動の影響を軽減し、通信品質を向上させる技術である。
  • (2):マルチパスによる遅延波をRAKE受信と呼ばれる手法により分離し、遅延時間を合わせて( C )で合成することで受信電力の増加と安定化を図っている。
ABC
1異なる境界逆位相
2異なる中央同位相
3同じ中央逆位相
4同じ境界逆位相
5同じ境界同位相

解答

5

解説

スペクトル拡散方式

多元接続方式(Multiple Access)の1つに、CDMA(Code Division Multiple Access)という方式があります。

CDMAには、スペクトル拡散方式(Spread Spectrum)という通信技術が用いられています。

拡散符号と呼ばれる特別な符号を各端末へ割り当てることで、同じ周波数帯域にて、複数の端末が基地局と同時に通信することができます。

スペクトル拡散方式は、BPSKやQPSKなどの変調後の信号(シンボルと言います)に対し、拡散信号と呼ばれる高速の信号を掛け合せることが特徴です。

例えば、元々のBPSKシンボル1ビットに対して、拡散符号8ビットを掛け合せた例を下記に示します。

シンボル間隔の1周期の中に拡散符号の1セットが入るようして、拡散符号を掛け合せます。

この送信シンボルに拡散符号を掛け合せることを拡散といいます。

今回の例では、シンボルに比べて拡散符号は8倍高速な信号です。周波数fと周期Tには、f=1/Tの関係があります。

元のシンボルに対して、拡散後の信号の周期が高速になるほど、つまりTが小さくなるほど、周波数fは大きくなっていきます。

すなわち、拡散符号を掛け合せる行為は、元の信号より周波数が大きくなる、つまり周波数帯域が広がることを意味します。

これがスペクトル拡散方式と呼ばれる理由なのです。

ソフトハンドオーバ

ソフトハンドオーバとは、同じ周波数を利用する基地局で、通話中や通信中に接続する基地局を切り替える技術です。

下記の例を見てみます。今、基地局Aのカバーエリアから、基地局Bのカバーエリアに移動しようとしています。

基地局Aから離れるほど電波が弱くなるため、基地局Bに切り替えたほうが電波が強くなります。

このような時に、同じ周波数での接続先の基地局を切り替えることをソフトハンドオーバと言います。

しかし、同じ周波数を使っているため、基地局Aと基地局Bは干渉しないのでしょうか?

これを解決するのが、スペクトル拡散と符号の割り当てなのです。

基地局Aと基地局Bに違う符号を割り当てることで、基地局同士の干渉を防いでいます。

RAKE受信

RAKE受信とは、電波の建物等による反射や回折によって生じた複数の遅延波をかき集め、位相を揃えて合成することで、受信信号の電力や品質を向上させる技術です。

RAKEと書いてレイクと読みます。RAKEは熊手という意味で、農業や庭掃除につかうレーキのことです。

送信機から受信機へと信号を伝送するとき、信号は障害物によって反射を何度も繰り返した後、受信機へと到達します。

このような環境を、信号の通る道(パス)が複数あることから、マルチパス環境と呼ばれます。

このマルチパス環境をうまく活用したのがRAKE受信です。

マルチパスによる信号は、通ってくる経路が異なるため、信号の到達時間が異なることから、遅延波とも呼ばれます。

遅延しているとはいえ、もともとは同じ信号です。

そのため、遅延によって変化した信号の位相さえ揃えてしまえば、これらをかき集めて合成することで、受信信号の電力の改善につなげられます。

これがRAKE受信なのです。

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