第一級陸上特殊無線技士

一陸特 平成31年2月 無線工学(B)問9

2022-02-07

問題

次の記述は、スペクトル拡散(SS)通信方式について述べたものである。内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。なお、同じ記号の内には、同じ字句が入るものとする。

  • (1):スペクトル拡散方式には、( A )方式、周波数ホッピング方式などがある。
  • (2):( A )方式を用いる符号分割多元接続(CDMA)の特徴は、( B )が良いこと、混信妨害の影響が小さいことなど優れた点がある。反面、基地局と移動局間の距離差などによって発生する遠近問題があり、この対策として( C )送信機の送信電力の制御が行われている。
ABC
1同時通話冗長性移動局側
2同時通話秘匿性基地局側
3同時通話冗長性基地局側
4直接拡散秘匿性基地局側
5直接拡散秘匿性移動局側

解答

5

解説

スペクトル拡散方式

多元接続方式(Multiple Access)の1つに、CDMA(Code Division Multiple Access)という方式があります。

CDMAには、スペクトル拡散方式(Spread Spectrum)という通信技術が用いられています。

拡散符号と呼ばれる特別な符号を各端末へ割り当てることで、同じ周波数帯域にて、複数の端末が基地局と同時に通信することができます。

スペクトル拡散方式は、BPSKやQPSKなどの変調後の信号(シンボルと言います)に対し、拡散信号と呼ばれる高速の信号を掛け合せることが特徴です。

例えば、元々のBPSKシンボル1ビットに対して、拡散符号8ビットを掛け合せた例を下記に示します。

シンボル間隔の1周期の中に拡散符号の1セットが入るようして、拡散符号を掛け合せます。

この送信シンボルに拡散符号を掛け合せることを拡散といいます。

今回の例では、シンボルに比べて拡散符号は8倍高速な信号です。周波数fと周期Tには、f=1/Tの関係があります。

元のシンボルに対して、拡散後の信号の周期が高速になるほど、つまりTが小さくなるほど、周波数fは大きくなっていきます。

すなわち、拡散符号を掛け合せる行為は、元の信号より周波数が大きくなる、つまり周波数帯域が広がることを意味します。

これがスペクトル拡散方式と呼ばれる理由なのです。

スペクトル拡散方式の利点

スペクトル拡散方式の強みは、①秘匿性と、②干渉(妨害波)に強いことです。

①秘匿性について

なぜなら、受信側で送信信号と拡散符号を知らない限り、信号を復元できないからです。

逆拡散の図で、もし逆拡散をする時に、送信時とは異なる拡散符号を使ったとしても、シンボルは正しく復元できません。

下記の例を見てみましょう。

偽の拡散符号を掛け合せても、BPSKシンボルを正しく復元できていません。

この理由から、スペクトル拡散方式は秘匿性が高いと言われています。

②干渉耐性について

なぜなら、逆拡散は、妨害波にとっては"拡散"をすることになり、妨害波の影響を希望信号に比べて低くできるからです。

例えば、下記の様なネットワークを考えてみます。

このときのスペクトル拡散の動作イメージを周波数軸で示します。

①が拡散前の信号です。

②が逆拡散後の信号です。スペクトル拡散のその名の通り、拡散後は周波数軸で広がります。

③が受信時の信号です。希望信号に加えて、干渉信号が加わっています。

④が逆拡散後の信号です。希望信号は逆拡散によって復元されますが、干渉信号にとっては拡散信号を掛け合せるために"拡散"されることとなり、干渉信号の影響が小さくなります。

これが、スペクトル拡散が干渉に強いと言われる理由なのです。

拡散符号について

スペクトル拡散方式を成り立たせているのは、拡散符号の特徴によるところが大きいです。

というのも、この拡散符号は一見、ランダムに見えますが、実は特殊な性質を持つビット列で、疑似ランダム符号(pseudorandom noise, PN符号)と呼ばれる特別な符号を用いています。

なぜ、このようなことをするのでしょうか?

CDMA方式では、基地局とスマートフォンなどの端末が通信する前に、基地局が端末ごとに拡散符号を割り当てます。

なぜなら、全端末で同じの拡散符号を用いると、信号を傍受(盗み聞き)できてしまうからです。

反対に、この拡散符号が知られなければ、信号を復号することができません。そのため、スペクトル拡散方式は秘匿性が高いと言われます。

ただし、この拡散符号は適当にビット列並べればよい、という訳ではありません。

多元接続を行うには、端末に割り当てた符号間の相互相関が低いことが求められるからです。

相互相関とは、2つの信号や符号の類似性を数学的に計算する方法です。

通信では、端末間同士の相互相関が低いと、互いの信号の干渉性が低いということを意味します。

干渉が低ければ低いほど、通信の成功する確率は高まります。そのため、この拡散符号には相互相関が低いことが求められるのです。

この相互相関が低い、という性質を満たすのがPN系列なのです。

PN系列の代表的なものには、M系列、ゴールド符号、Walsh-Hadamard系列などがあります。

遠近問題

しかしながら、スペクトル拡散方式には遠近問題(near-far problem)という問題があります。

遠近問題は、端末の位置関係により生じる問題です。

例えば、下記の様な配置を考えてみます。

基地局と通信したい端末が遠くにあり、干渉となる端末が基地局の近くにあります。

すると、基地局からの距離の違いによって、干渉波の電力が希望波の電力よりも大きく、強い干渉を受けるために、希望信号を取り出せなくなります。

これが遠近問題です。

送信電力制御

遠近問題の対策として、送信電力制御(パワーコントロール)があります。

送信電力制御は、各端末の送信電力を調整することで、基地局での受信電力を一定にするものです。

基地局は、各端末からの電力を観測して、遠方の端末は送信電力を上げ、近辺の端末は送信電力を下げるように指示します。

すると、基地局で各端末からの受信電力が揃うため、遠近問題を解決できるのです。

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