問題
次の記述は、直接拡散方式を用いるスペクトル拡散(SS)通信について述べたものである。( )内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。
- (1):この方式は、狭帯域信号を( A )によって広帯域信号に変換して伝送し、受信側で元の狭帯域信号に変換するもので、( B )などに優れている。
- (2):また、この方式は、受信時に混入した狭帯域の妨害波は受信側で拡散されるので、狭帯域の妨害波に( C )。
A | B | C | |
---|---|---|---|
1 | 拡散符号 | 冗長性 | 弱い |
2 | 拡散符号 | 秘匿性 | 強い |
3 | 拡散符号 | 秘匿性 | 弱い |
4 | 単一正弦波 | 冗長性 | 弱い |
5 | 単一正弦波 | 秘匿性 | 強い |
解答
2
解説
スペクトル拡散方式
多元接続方式(Multiple Access)の1つに、CDMA(Code Division Multiple Access)という方式があります。
CDMAには、スペクトル拡散方式(Spread Spectrum)という通信技術が用いられています。
拡散符号と呼ばれる特別な符号を各端末へ割り当てることで、同じ周波数帯域にて、複数の端末が基地局と同時に通信することができます。
スペクトル拡散方式は、BPSKやQPSKなどの変調後の信号(シンボルと言います)に対し、拡散信号と呼ばれる高速の信号を掛け合せることが特徴です。
例えば、元々のBPSKシンボル1ビットに対して、拡散符号8ビットを掛け合せた例を下記に示します。
シンボル間隔の1周期の中に拡散符号の1セットが入るようして、拡散符号を掛け合せます。
この送信シンボルに拡散符号を掛け合せることを拡散といいます。
今回の例では、シンボルに比べて拡散符号は8倍高速な信号です。周波数fと周期Tには、f=1/Tの関係があります。
元のシンボルに対して、拡散後の信号の周期が高速になるほど、つまりTが小さくなるほど、周波数fは大きくなっていきます。
すなわち、拡散符号を掛け合せる行為は、元の信号より周波数が大きくなる、つまり周波数帯域が広がることを意味します。
これがスペクトル拡散方式と呼ばれる理由なのです。
スペクトル拡散方式の利点
スペクトル拡散方式の強みは、①秘匿性と、②干渉(妨害波)に強いことです。
①秘匿性について
なぜなら、受信側で送信信号と拡散符号を知らない限り、信号を復元できないからです。
逆拡散の図で、もし逆拡散をする時に、送信時とは異なる拡散符号を使ったとしても、シンボルは正しく復元できません。
下記の例を見てみましょう。
偽の拡散符号を掛け合せても、BPSKシンボルを正しく復元できていません。
この理由から、スペクトル拡散方式は秘匿性が高いと言われています。
②干渉耐性について
なぜなら、逆拡散は、妨害波にとっては"拡散"をすることになり、妨害波の影響を希望信号に比べて低くできるからです。
例えば、下記の様なネットワークを考えてみます。
このときのスペクトル拡散の動作イメージを周波数軸で示します。
①が拡散前の信号です。
②が逆拡散後の信号です。スペクトル拡散のその名の通り、拡散後は周波数軸で広がります。
③が受信時の信号です。希望信号に加えて、干渉信号が加わっています。
④が逆拡散後の信号です。希望信号は逆拡散によって復元されますが、干渉信号にとっては拡散信号を掛け合せるために"拡散"されることとなり、干渉信号の影響が小さくなります。
これが、スペクトル拡散が干渉に強いと言われる理由なのです。