第一級陸上特殊無線技士

一陸特 平成31年2月 無線工学(A)問9

2022-01-14

問題

次の記述は、直接拡散方式を用いるスペクトル拡散(SS)通信について述べたものである。( )内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。

  • (1):この方式は、狭帯域信号を( A )によって広帯域信号に変換して伝送し、受信側で元の狭帯域信号に変換するもので、( B )などに優れている。
  • (2):また、この方式は、受信時に混入した狭帯域の妨害波は受信側で拡散されるので、狭帯域の妨害波に( C )。
ABC
1拡散符号冗長性弱い
2拡散符号秘匿性強い
3拡散符号秘匿性弱い
4単一正弦波冗長性弱い
5単一正弦波秘匿性強い

解答

2

解説

スペクトル拡散方式

多元接続方式(Multiple Access)の1つに、CDMA(Code Division Multiple Access)という方式があります。

CDMAには、スペクトル拡散方式(Spread Spectrum)という通信技術が用いられています。

拡散符号と呼ばれる特別な符号を各端末へ割り当てることで、同じ周波数帯域にて、複数の端末が基地局と同時に通信することができます。

スペクトル拡散方式は、BPSKやQPSKなどの変調後の信号(シンボルと言います)に対し、拡散信号と呼ばれる高速の信号を掛け合せることが特徴です。

例えば、元々のBPSKシンボル1ビットに対して、拡散符号8ビットを掛け合せた例を下記に示します。

シンボル間隔の1周期の中に拡散符号の1セットが入るようして、拡散符号を掛け合せます。

この送信シンボルに拡散符号を掛け合せることを拡散といいます。

今回の例では、シンボルに比べて拡散符号は8倍高速な信号です。周波数fと周期Tには、f=1/Tの関係があります。

元のシンボルに対して、拡散後の信号の周期が高速になるほど、つまりTが小さくなるほど、周波数fは大きくなっていきます。

すなわち、拡散符号を掛け合せる行為は、元の信号より周波数が大きくなる、つまり周波数帯域が広がることを意味します。

これがスペクトル拡散方式と呼ばれる理由なのです。

スペクトル拡散方式の利点

スペクトル拡散方式の強みは、①秘匿性と、②干渉(妨害波)に強いことです。

①秘匿性について

なぜなら、受信側で送信信号と拡散符号を知らない限り、信号を復元できないからです。

逆拡散の図で、もし逆拡散をする時に、送信時とは異なる拡散符号を使ったとしても、シンボルは正しく復元できません。

下記の例を見てみましょう。

偽の拡散符号を掛け合せても、BPSKシンボルを正しく復元できていません。

この理由から、スペクトル拡散方式は秘匿性が高いと言われています。

②干渉耐性について

なぜなら、逆拡散は、妨害波にとっては"拡散"をすることになり、妨害波の影響を希望信号に比べて低くできるからです。

例えば、下記の様なネットワークを考えてみます。

このときのスペクトル拡散の動作イメージを周波数軸で示します。

①が拡散前の信号です。

②が逆拡散後の信号です。スペクトル拡散のその名の通り、拡散後は周波数軸で広がります。

③が受信時の信号です。希望信号に加えて、干渉信号が加わっています。

④が逆拡散後の信号です。希望信号は逆拡散によって復元されますが、干渉信号にとっては拡散信号を掛け合せるために"拡散"されることとなり、干渉信号の影響が小さくなります。

これが、スペクトル拡散が干渉に強いと言われる理由なのです。

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